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金、銀、プラチナ箔
野口 康
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Gallery NYCoo5月は京都西陣の野口康の金、銀、プラチナ箔を駆使した絵画作品による個展を開催する。
野口は箔屋「野口」四代目の当主、西陣織りに織り込まれる金銀箔貼りに36年の経験を持つ真のアルチザンである。その蓄積された知識と経験から得た技をもとにして自分自身の創造性を求めた絵画作品をニューヨークで発表する。
「私の作った金箔は元の状態で人の目に触れることは殆ありませんが、着物の帯に織り込まれ、世界中の人が既に見ています」と彼はいう。その彼が生きる京都の伝統社会の通念、しがらみを乗り越え、自分個人の視覚世界をここニューヨークに展示し、我々はそれを目にすることが出来る、いうに及ばぬ稀な機会であろう。会期中の御一見を強く勧めます。
1968年学園紛争で中断されてしまった写真、写真機を通してイメージを追う欲求は、この家業に専念した30余年燻り続けていた。その間、世界の金色を見ようと、多くの国々―エジプト、中国、ヨーロッパ―を歩いた。と同時にさまざまなイメージが脳裏の中のフイルムに焼き付いた。
世界の何処かの古壁に描かれた線、エジプトか地中海か光りに溢れる眩しさに目を閉じ、写真機のシャッターをきるように一瞬目を開け、また閉じるその時の眼底の残像、日本の水の流れの表現の上に浮遊する型のリズム、目を瞑ればすぐ浮ぶジーンアープ(1887-1966、パリ、フランス。ダダイズムとシュールリアリズムの間で制作)様のヌード、それらのイメージがこの個展作品になっている。
2004年京都で初の個展を開催した。それは次男の美術展グランプリ受賞に触発されてのことであった。今回は3回目の個展になる。作品の傾向はモダニスティック抽象と云うべきだろう。1960年代半ばの出自の影響と思われる。
この作家にとってNY個展が持つ意義は、自分の作品を異なった環境に置き、今まで経験し得なかた客観的目で捉え、自分が立っている芸術上の位置を知ることだと思う。これが次の制作展開への展望を探る契機となることであろう。
今回の個展作品を写真複製でみている筆者には、この五月展で作品の前に立つのを心待ちにしていると共に、ここからこの作家の展開する制作の未来に尽きぬ興味を持つのである。
この未来の展開の声援の為にも多くのオ-プニング参加、また、会期中の来廊を乞う次第です。
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