2010 年 9月 の展覧会

松窪 英二
9029 & Now

2010年 9 月8日(水)〜9月25日(土)
オープニングレセプション 2010年 9月9日(木) 5時〜7時半

開画廊時間 :火〜金 12-6PM/土12-5PM(閉館日:日曜&月曜)

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NYCoo ギャラリー、2010/2011シーズンは、当ギャラリーでの、そしてアメリカおよびニューヨークでの初個展となる松窪英二「9029 & Now」展開催で幕を開けます。

松窪は熊本県生まれ、多摩美術大学油絵科でB.F.A 、同大学院で M.F.A 修了後、東京、熊本での個展、アートパフォーマンス活動に加え、日本、韓国、ニューヨークでのグループ展多数。1984年日本グラフィック展パルコ賞はじめ受賞歴数回。2005年当ギャラリー主催第一回公募展グランプリ受賞者でもある。

彼は、1985年渡米、当時エネルギーに溢れた、最もニューヨークらしいとも言えたイーストビレッジで時を過ごし、その強烈な空気を全身に吸い込みながら、アートとは何か、絵とは何かを求め続けた。傍ら生活のために魚屋で22年間働く。しかしそこで、それまでの体験ではわからなかったことがある日ピンと来たという。例えば「ゲシュタルト」(形)というもの。哲学書を読んでもわからなかったモノが魚屋で理解できたという。アートにおいても考え方が変わり、オリジナルな考え方がオリジナル表現を創る事を知る。「アート」とはまた、何かの「最高の形」のことを言うのではなく、数学と同じく「サブジェクト」、すなわちひとつの科目であり、「アートヒストリー」と強く繋がっているとも言う。彼の描く世界は「ストーリー」を必要とする。そこが「抽象表現主義」を超える部分で、また現在「ポップアート」の焼き直しのアートが多いと感じている彼は、そこを「アンチ・ポップ」で乗り越えようとしている。

その松窪が病にかかった。それもALS(日本語では、筋委縮性側策硬化症)という難病だ。、ホーキング博士や、「モリー先生と火曜日」の先生と同じ原因不明の、ある意味 「不治の病」である。脊髄の病で末端の運動細胞に信号が上手く伝わらなくなり、動けなくなったり、呼吸出来なくなり、死に到る。彼は現在その過程ではあるが、進行している実感はあるという。もし病気にならなければ漫然と滞在し続けたかもしれないニューヨークを去る決心をし、彼自身のニューヨークでの25年を総括するための今回の個展開催となった。

展覧会タイトル「9029 & Now」の9029とは、彼が初めてニューヨーク、ケネディ空港に降り立った1985年12月16日から今回のこの個展が始まるまでの日数である。一日一日が貴重な時間であったし、これからもそうである。ただ彼は病にかかったからといって、悲観しているわけでも暗く閉じこもっているわけでもない。それを受け止め、それまでの彼の全ての人生とバランスをとるような展覧会をしたいという。いかに神様が勝手に描いた、という風な「力を抜いて」「手を抜かない」作品が描けるか、そして一方「見る」ということがいかに不安定な、不確かなものか、を表現したいと思っている。テーマは水。水は流れ、決して止まらない、腐らない、変化し続ける。生命に不可欠な、必須なもの。すなわちそれは、生きる、ということ。

 

「わかった」ということと「それを表現できる」ということは違うことだとも認識し、*トンブリーそして*リヒターが好きだという彼は、哲学的な色彩画家かもしれない。

しかし彩度を上げ、発色をよくするのは難しく、「美」とは、提示方法の可能性の追求でもあるという彼は平面を選ぶ。立体とは違い、一瞬で全てがわかる、そこに魅力を感じるという。彼の全人生の思いと力で、彼の色彩を「描く」という

より「塗る」ことにこだわる−それは形を消去し、強調する―彼にとっての最高の表現手段である油絵約20点、そしてもうひとつの表現手段であるCG, 自ら描いた絵を元にコンピューターで加工し、油絵の抽象に対して具体的な形を入れ、未知の世界のイメージを広げるプリント作品数点を展示する。
ひとりの作家の、ここニューヨークという場所とかかわった25年の、ひとつの真摯な姿勢をご高覧いただければ幸いです。

NY Coo Gallery

* サイ・トンブリー Cy Twombly
* ゲルハルト・リヒター Gerhard Richter

 

★★★★★

 

--------- 展覧会の様子 ----------