3月の展覧会 2005年

アネット・ルーシン

吉野 富夫

2005年 3月8日(水) 〜 26日(土)

レセプション 3月11日(金)
5:00-7:00PM

開画廊時間 :火〜土 12:00-6:00PM

 

アネット・ルーシン (油彩半透明ベラム紙)

吉野 富夫 (鋳物/アルミニウム、鉄)

 

 

NYCoo画廊3月展は壁面が当画廊の昨年度末の公募展に於いての NYCoo画廊賞受賞者アネットルーシンの半透明ベラム紙による作品と、そして、画廊床中央に設置されたペデスタル上に吉野富夫の鋳物の作品数点が展示される二人展です。

前出公募展はこの画廊をより多くの芸術家の発表の場として育てようと云う二人のオーナーの熱望で企画され、その最高賞の一つにルーシンの作品が選ばれました。

 彼女はロ−ドアイランドデザイン校(RISD)の建築科卒業後、建築家ロバート    ベンチュリの下で働きましたが、絵画制作への欲望堪え難く、NYビジュアル アートでの制作経験、エドバート ムンクの作品を見る為のノ−ルウェ−への旅などを経て、建築から離れ、抽象絵画制作に没入し、1994年 NYハンター カレッジの絵画で修士(MFA)を取得しました。以後、個展、グループ展、奨学金受賞を重ねています。特筆すべきはマクドウェル芸術コロニー (MacDowell Colony)での制作経験でしょう。

 NYCoo画廊賞応募作品の中でルーシンの作品はその視覚的語彙の豊富さ、その感覚の繊細さで表現されるイメージが半透明のベラムに描かれ、それを重ねることにより含蓄な絵画空間を作り出しています。この手法は直接の描画、モノタイプ、カーボン紙等多種の過程に由るようです。過去数年制作続けた「Toyokoシリーズ」、今回発表の作品、それはLiza Dalby著「The Tale of Murasaki」に啓発されたと云われる作品群もこの表現法によるものです。
「Toyokoシリーズ」のToyokoは友人の名、日本人フィルム・メーカー、彼女の死が制作の契機となったようです。同じ技法が使われていてもこのシリーズはより形象的、叙述的な表現です。今回発表作品はより抽象的、菊の花の形体が反復 するような感覚的に明るい、しかし密度のある画面を見せています。
 この技法と素材故に実際に観ることが、絶対必要な作品シリーズと強く推します。
吉野富夫は自分のイメージと感性に従った、そして日本独自の伝統的工法と技術を活かした物造りに専念してきました。また、そこからオーガスタジャパニーズデコ(Auguata Japanese Deco)を創設させ、ここで日本の伝統工芸技術と日本近代工業技術の癒合接点で現代から未来の住空間に残るデザインと物造りをその目標としています。

今回発表される作品に付いて「空気の流れ、水の流れ、生命の誕生など日頃自然の中で起きている事を自分のフィルターを通して形にしました。」と言っています。鉄鋳物とアルミ鋳物の作品が展示され、「鉄鋳物は砂型特有の美しい鋳肌を残しそこに黒漆の焼付着色とオハグロの熱処理による伝統的な着色方法をしています。アルミ鋳物は逆に鋳肌を削り取り除き良質なアルミを使用して鏡面仕上げをしています。狭い部分の鏡面バフがけは熟練職人の高度な技術が必要とされています。」 (括弧内は作家ステートメントより引用)

NYCoo画廊の3月展はアネット・ルーシンの作品の非常に個人的世界と吉野富夫の伝統技術と自分の個の存在の接点での物造りの世界の対比で熱気あるものに なるでしょう。

 

 

ギャラリーライター 中里 斉