平松尚樹
いろはかるたNEW YORK展
NY Coo Galleryの10月展は、日本人アーティスト平松尚樹の待望の個展です。
さまざまな表現の可能性に挑戦してきた平松尚樹がついに辿り着いた手法、“板絵”。平松は日々の暮らしを形作る断片の記憶や愛情をB全サイズという空間に精力的に描きだしてきました。野菜、果物、パンなどの日々の糧から、スコップ、ボルト、ハンマー、軍手などの労働をイメージさせるものまで、彼の興味を惹きつけたものはどれも見慣れたものばかりです。『いろはかるた New York展』に描かれたテーマ、そこには多くのメッセージがこめられています。日々の小さな幸せを信じ、ひとりの人間がささやかに生きていくだけでも、どれほど多くのモノが必要とし、それらに支えられているか…と。モノたちへの愛情と感謝、そして現代のライフスタイルへの静かな警告を秘めた『いろはかるた New York展』、21世紀という時代を飄々と生きる平松の人間味溢れる眼差しと外界との粋な距離感、会場の壁にインスタレーションされた48枚の「いろはかるた」を通して平松の眼を体感してください。
平松尚樹プロフィール
美術家。1941年神戸生まれ。1963年、多摩美術大学卒業後、早川良雄デザイン事務所、スタジオ・ユニを経て、1973年に平松尚樹事務所を設立し、現在に至る。各種デザインプロジェクトに、イラストレーター、アートディレクターとして参加。プロフェッショナルワークの傍ら、作品制作に意欲的に取り組む。
主要個展歴
『アルファベット』東京・池袋パルコギャラリー,1968 /『遊びをせんとや生まれけん』 東京・銀座クリエーション・ギャラリーG8, 2004 /『錆展』 名古屋・スペースプリズム, 2005
【応援メッセージ】
早川良雄先生 「暖かい。強い。」***************************************
ベニヤ板に表面加工したテクスチァーを<画面>として描かれる平松尚樹の絵は、「何のため」ではなく、内側から油然として発する造形的な衝動によって描かれるという。これほど強い<必然>はない。それら、無償の行為としての自由作品は、創作の筆おろしや完成の時期も不定であり恣意的ですらあるらしい。
そのモチーフは、私たちの日常生活のシーンに登場する親しい<モノ>たちであって、平松の描法に溢れる人懐っこい暖性が、見る者との距離を瞬時に縮めてしまうのである。
普遍性をベースにした、このユニークな魔力に乾杯!
早川良雄 Yoshio HAYAKAWA
1917年大阪生まれ。昭和期の日本を代表するグラフィックデザイナー。1960年代以降、多くの企業ポスターや書籍の装丁デザインを手掛け、グラフィックデザイン界に多大な影響を与えた。1982年、紫綬褒章、1988年、勲四等旭日小綬章を受章。代表作は「女の顔」シリーズ(1985年〜)など多数。
長友啓典氏 「板前割烹のあの味だ」 ***************************************
平松尚樹のイラストレーションから受ける印象は、何といっても見る人の気持ちを包み込む「暖かさ」だと思う。どこがどうとか言えないが、何だか分らない関西系の「温もり」がある。「はんなり」とした関西料理の、しかも板前割烹のあの味だ。老舗の醸し出すおやじさんのあの味だ。平松は変幻自在の包丁さばきで、海のもの、山のものを料理するおやじさんと同じく、客が望む絵をなんなく提供してくれる。線の一本一本が躍動している。色使いの繊細さが絶妙だ。名人芸の域にいる。「まぁ、よろしいやん。楽しくいきましょう」と語りかけてくれているようだ。知り合って50年近くになるが、その感性は昔も今も変わらない。見事なスタンスだ。
長友啓典 Keisuke NAGATOMO
1939年大阪生まれ。1964年桑沢デザイン研究所卒業。日本デザインセンター入社。1969年黒田征太郎とK2設立。エディトリアル、各種広告、企業CI、及びイベント会場構成のアートディレクションを手がけるほか、多数の小説に挿絵、エッセイ連載など、現在に至る。日本工学院専門学校グラフィックデザイン科顧問、東京造形大学客員教授。
大迫修三氏 「子供が身近にあるものをなんでも無邪気に」 ***************************************
平松尚樹氏は、1970〜80年代には、非常にポピュラリティーの高い、子供や家族をテーマにしたイラストレーション作品を手掛け、活躍の場を広げていました。やがて手法も、ドローイング、紙版画から陶板、銅板やブリキ板をたたいて描きあげるものなど、多岐にわたっていき、それはまるで、子供が身近にあるものをなんでも無邪気に自由に取り入れていく姿に似ています。こうした遊び心溢れる創作活動の中でこの10年ほど取り組んでいるのが今回の出品作品のシリーズです。モチーフは、身近に存在する道具や生活用品ですが、大胆な構成と省略による力強い画面は、誰もが持つモノへの憧憬や郷愁を引き出すエネルギーを秘めており、不思議に日本人の持つ情緒までもが描きこまれているように思います。
大迫修三 Nobumitsu OSEKO
1953 年東京生まれ。76年多摩美術大学グラフィックデザイン専攻卒業。同年日本リクルートセンター〈現リクルート〉入社。85年G7ギャラリー〈現クリエイションギャラリーG8〉の開設時より、企画・運営を担当。また、90年ガーディアン・ガーデンを創設し、現在までに両スペースを通じて520本の企画展をプロデュースしている。
比嘉良治氏 「“かるた”が平松によって大海を渡ってNew Yorkにやってくる。」 ***************************************
“かるた”が平松によって大海を渡ってNew Yorkにやってくる。日本最古のカルタ「天正(テンショウ)かるた」にはじまり「うんすいかるた」絵合わせの「貝覆」や「百人一首」「花札」がある。身近なところでは倫理や教育・文化など社会的に影響が深い「上方いろはかるた」「江戸いろはかるた」だ。「かるた」はポルトガルからの輸入語でトランプなどの数字より歌人や画家の影響をうけ、ビジュアルと言葉で発展し日本に定着した。日本のかるた文化が平松によって広重や北斎の遊びごころと西洋近代絵画、アメリカンポップアートなどさまざまな時代の表現手段を共有しながら「いろはかるた」展に昇華し再び西洋文化圏にもどる。期待は大きい。
比嘉良治 Yoshiharu HIGA
1938年生まれで、名護市出身。64年に渡米し、77年、コロンビア大学大学院修了。サウスハンプトン大学、ロングアイランド大学で教授を務めた。2000年からロングアイランド大学名誉教授。現在、画家、写真家として活躍している。
黒田征太郎氏 「世の中はしぼみにしぼんでいるのですからよい夢を!!」 ***************************************
前略、平松さま、いやひらまっちゃん。知り合ってからながいね。よく食べ、よく飲み、そして夢を語りましたね。お互いとりあえず生きてきましたね。そして平松尚樹がまだ夢の途中だということを知って、僕はうれしいです。だってほとんどの人は夢を見ることを忘れてしまって、そして今。世の中はしぼみにしぼんでいるのですからよい夢を!!ひらまっちゃん。
黒田征太郎 Seitaro KURODA
1939年大阪府生まれ。イラストレーターとしてポスターや挿し絵で数々の賞を受賞するとともに、壁画制作、ライブペインティングなど幅広いアーティスト活動を展開。現在、ニューヨークを拠点に活動中。国内・海外でのライブペインティングや壁画制作に加え、子どもたちや、病院での患者、医師、看護師の参加によるアートセラピー的なワークショップなど、 幅広く活躍中。ワルシャワ国際ポスタービエンナーレ銅賞受賞。
--------------------- October News ---------------------
The opening reception for HIsaki Hiramatsu Solo Exhibiton“IROHA KARTA” in NEW YORK on Friday, October 3rd.
Please visit our gallery and experience it yourself. The exhibition runs through October 18th.
Top: Artworks / Mr. Hiramatsu / Artworks
Bottom: With Mr. Seitaro Kuroda / Mr.& Mrs. Hiramatsu / Artworks
**************************************************************
I love to paint.
For me, a painting is a song in praise of life.
Ordinary every day objects, some new and some old or even broken
are all subjects of my paintings.
Each object, new or old, whole or broken, are like beautiful fruits to me,
as each was born new to live their own life.
These objects of everyday life are reflections of our past and future life.
In life, there is rust or aging that comes with the passage of time.
For me, a rusting object represents a cherished memory of time's passing.
An object, however, lives on forever.
In life, objects become worn as they are used, like a wall scratched by a cat.
I feel like the touch of everyday life is within each object.
In life, there are also many colors that shine.
Colors are the outer skin of an object, like clothes.
I adore colors with great passion.
The Japanese people have used various mediums to interpret life.
I choose to paint on wood, as wood, is spiritually significant for the Japanese people.
I love to paint on wood in a "B-sized format."*
This format is the traditional format for artists with a graphic design background,
like the sea is the mother of all human beings.
* "B-sized format" is a term meaning "poster size" in Japan.
Hisaki HIRAMATSU
Translation and Edited by: Richard Baallerini
|