2008 年 10月 の展覧会

中里 斉 個展
“広島再訪―黒い雨”


10月1日〜10月16日
レセプション10月2日(金)5-7:30PM

 

開画廊時間 :火〜金 12-6PM 土12-5PM(閉館日:日曜日・月曜日)

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「広島再訪―黒い雨 中里斉展 」 のご案内を致します。

2001年9月11日以後、中里はこのままニューヨークのスタジオに留まって創作活動を続けるか、それとも他にやることがあるのではないかと迷っていた。
アートは常に、我々の回りで起こる出来事を拠り所とした時代精神を反映する。それにも関わらず不思議なことに、アートは現実的に起こっていることに関して、その瞬間必要としていることらに表面的な遠く離れた距離感がある。最終的に中里は自分のアートは社会に貢献できるかどうか自身に問いた。

「黒い雨」と題される今回の発表作品は2008年の春、中里が広島を再訪した感慨を、このシリーズに託し、同時にその表現の衝動を梃子に新たな絵画領域を試み、その成果の白黒の作品60数点の個展である。

このシリーズの初回展「広島再訪―近代語彙を超えて」は昨夏フィラデルフィアのパジェント画廊で開催され好評を得た。今年の8月6日、広島世界平和記念式典の夕刻、爆心地に近い画廊で個展開催予定だったが、広島展はアメリカ発のサブ×プライム×ローン破綻の影響でスポンサー側の撤退から中止、フィラデルフィアでの開催となった。フィアデルフィアはアメリカ独立の地で、独立記念日の前日、7月3日にオープンした。そして、この秋、オバマ大統領の核軍縮のニューヨーク国連総会スピーチの数日後に、この個展が開催されることは意義多い芸術表現と思われる。

中里斉は 10歳の時に終戦と体験し、多摩美術大学油絵科卒、北海タイムス美術記者 、ウイスコンシン大学MS、ペンシルバニア大学美術大学院MFA、ロックフェラー財団基金奨学金受領、1966年以後、東京及びニューヨークで制作に専念している。日本での作品発表は東京画廊、村松画廊など多数,その中には原現代美術館個展も含まれている。来春は町田市立国際版画美術館での個展が予定されている。

この新画廊スペースでの初回個展は来場の皆様の期待に添える、あるいは超える、充実した新作品発表の機会となるでしょう。是非のご来場をお待ちしております。

NY Coo Gallery

中里斉声明文「黒い雨、シリーズII」

カンバスに、線を描く、或は、ある色で塗りつぶすと云う単純な制作の中に伝統から現代の美感覚も含まれ、自己の全ての創造表現が在るとした時代。
見る人の視線をより多く得る為、これ等ミニマリズムの作品にコーテェションマークして、括弧の様な部分的な額を付けたり、横長な変形カンバスの作品時代。
対比、また折衷的な緊張効果を得る為に、カンバス二枚を対にした時代。
丸、三角、四角の仙涯の視覚語彙を使って絵画の既成概念の外に行こうとした線外シリーズの時代。
ギリシャから13世紀への単子論哲学に比喩したモナド論シリーズの時代。

上記は1970年頃から今迄の、自分の領域を捜したモダニズムの中での軌跡です。それは私的な背景からは焦点を外し、近代主義の頂点に行こうと、前ばかりを向いて制作していました。前衛の騎手に!

10年前、ある美術館の要請で、作品輸送費を削減する為、大きな紙の作品制作に取り組み、縦巾30インチ、横の長さ35フィートのシリーズ、長さ50mにジグザクに描かれた400mの一本の線が描かれている作品等が完成しました。この制作の中で輸送費削減と云う現実性を遥かに離れた己自身の領域に深く嵌まり込んでいました。が、これらの作品は大き過ぎて全眺できない。
何故この超横長の作品を制作し、何が内的慾求なのかを、ふと、考えました。そして、ある事に思い当たり愕然としました。それは記憶の最低部に隠れていた原風景、母親の実家紺屋の裏庭、せんし針で張られた染め物が干された列と列の間に母親を捜した記憶でした。日に照らされたあの色と、何処迄も続いた染物の長さ。前を向いて造られた新作品と、70年も前の古い視覚的記憶が交叉していたのを見たのでした。新しい作品の根底に原風景が在ったに、涙と感動の1語でした。

この経験の後、広島を再訪、資料館、次から次に英文の書簡を読む、衝撃をうけました。平和記念式典の日に合わせた個展計画をし、広島をテーマに制作する事を決意しました。自分の戦争と戦後体験を重ねて、反原爆こそが、自分に課せられた課題だ、自分の制作の基礎をここに置く、それ以外に無いと思いました。

ピカソのゲルニカのモノクロームが念頭にあり、白黒の作品シリーズを目指し、行き当たるイメージを小さなパネルに描き止める作業から始めました。「映画のフイルムの1こま、1こま、の様だ」との評を得ました。
2001年に始めた新世紀を記念した2001点のシリーズ作品制作は、9/11の同時多発テロ事件の時も描き続けましたが、その最終部分はこの「黒い雨シリーズ」となりました。

2009年9月11日
中里斉

 


********** NY Coo Gallery News Letter - September **********

NY Cooギャラリーでこの2週間、開催されている中里斎の“広島再訪・黒い雨”展 はパネルに描かれた45点の白黒のペインティングと、5点の画廊の天井から床 まで垂れ下がるモノプリント(版画)に囲まれ、特異な空間を作り出していま す。「黒い雨」と題され、反核の思想に導かれながら造られた作品は、同時に、 人間性の謳歌でもあります。人を愛し合う美しさに満ちています。そして人間の 創造する思考と、未来への指向に満ちています。

Please visit our gallery and experience it yourself.
The exhibition runs through October 16th.

A scene from the opening reception & The artist and his wife.

*** 写真アルバム公開  ***